list_magatama鳥取県の古墳時代の玉類

鳥取県域では弥生時代前期に列島内でもいち早く玉作りを開始して以来、弥生時代を通じて玉作りが盛んに行われてきました。 ところが古墳時代になるとなぜかほとんど行われなくなってしまいます。この地域では、弥生時代から古墳時代への移行は玉の生産地から消費地への転換でもあったのです。 古墳時代終末期の多角形墳である福本70号墳は、銅製の匙等の渡来系遺物が副葬される有力者の墓ですが、ここでも多くの石製玉類が見つかっています。 この時期、他地域の上位階層の古墳の中には、石製玉類に代わって金属製玉類が副葬されますが、この地域では終末期にいたるまで、石製玉類が好まれたようです。
鳥取県の主な玉出土遺跡位置

箆津(のつ) 乳母ヶ谷(うばがたに) 第2遺跡出土の玉類

箆津1区 斜面部 玉類出土状況:鳥取県埋蔵文化財センター提供
箆津1区 斜面部 玉類出土状況:鳥取県埋蔵文化財センター提供
位置:
箆津(のつ) 乳母ヶ谷(うばがたに) 遺跡は、鳥取県琴浦町の北西部の標高45m〜61mの丘陵先端付近に位置します。 古墳時代終末期にあたる7世紀代の集落の斜面を削って造成されたテラス面におかれたような状態で出土しました。 出土した玉の種類はメノウ製勾玉4、碧玉製勾玉1、碧玉製管玉4、碧玉製丸玉2、緑色凝灰岩製管玉1、水晶製丸玉4、ガラス小玉13です。玉の並び方や孔の位置関係等の出土状況の検討から、これらを交互に連ねていたことが分かりました。当時の玉の組み合わせ方までが具体的に分かる好例です。 メノウの赤や、ガラス小玉の青、碧玉の緑等が交互に連なり、彩り豊かな首飾りであったことが分かりました。古代の人々の豊かな色彩感覚を教えてくれる一品です。

子持勾玉

子持勾玉(鳥取県)
子持勾玉:鳥取県立博物館所蔵
 
位置:
明治41年、鳥取県中部に位置する湯梨浜町高辻の畑の開墾中に出土しました。当時は遺跡としての調査を行わなかったため、遺跡の時期や性格は不明です。 本品は大型の勾玉が横に2つ連結した大変珍しい形をしており、さらに周囲に小勾玉が複数個連結しています。滑石製であり、丁寧な研磨が施された優品です。

福本70号墳

福本70号墳玉類(鳥取県)
福本70号墳玉類:鳥取県八頭町教育委員会提供
 
位置:
福本70号墳は、鳥取県東部の八頭町に位置する7世紀前葉から中葉の終末期古墳です。墳丘は多角形墳で、横穴式石室内から中国・朝鮮半島と関わりが深い銅製匙や金銅装の馬具や角形把手付椀等が出土しました。 玉類は、石室からこうした副葬品とともに出土しました。玉の種類はメノウ製勾玉2点のほかはガラスや水晶製などの丸玉などです。 鳥取県域では渡来系の副葬品を所有する首長クラスであっても、古墳時代終末期まで石製勾玉が装身具として使用されていたことが分かります。