list_magatama奈良県の古墳時代の玉類

 奈良県では、ホケノ山古墳や黒塚古墳といった出現期の古墳の埋葬施設を調査していますが、玉類は副葬されていませんでした。桜井茶臼山古墳や下池山古墳が玉類副葬の開始期にあたり、ヒスイ製勾玉に碧玉製管玉やガラス製小玉が組合います。4世紀後半には水晶・メノウ製勾玉のほか、滑石製玉類が新たに加わり、4世紀末から5世紀前半になると滑石製品が増加するとともに、朝鮮半島系の金属製玉類がみられます。6世紀には金属・ガラス製玉類が中心となり、藤ノ木古墳や牧野(ばくや)古墳では10,000点を超える玉類が副葬されていました。 玉作り遺跡は、奈良県では玉に使用される原石の多くが産出しないものの、4世紀後半から6世紀中葉にかけて全国最大規模の玉作りをおこなった曽我遺跡が所在します。
奈良県の主な玉出土遺跡位置

曽我(そが)遺跡

曽我遺跡玉作関連の遺物(奈良県)  
位置:奈良県橿原市曽我町
4世紀後半から6世紀中葉までの大規模な玉作り遺跡です。玉作りの最盛期は5世紀後半にあります。玉に用いられた石材をみると、量的には滑石が多いのですが、重要な点は碧玉、緑色凝灰岩、水晶、メノウ、ヒスイ、コハクによる多種多様な玉類が製作されたことにあります。また、これらの原石が島根県や石川県、和歌山県など全国各地から運ばれたことは、この遺跡の特殊性を物語っています。

新沢千塚(にいざわせんづか)500号墳

新沢千塚500号墳 勾玉(奈良県)
位置:奈良県橿原市一町
新沢千塚500号墳は、新沢千塚古墳群のなかでも最古の前方後円墳です。4世紀後半に築造され、全長62mを測ります。埋葬施設は、後円部に2基の粘土槨(ねんどかく)、前方部とくびれ部に各1基の粘土槨が確認されています。副葬された玉類には、従来のヒスイ製勾玉のほか、新たに用いられた石材である水晶製とメノウ製の勾玉がみられます。赤いメノウと白く透き通った水晶は、島根県の花仙山(かせんざん)産と推測されています。

藤ノ木(ふじのき)古墳

藤ノ木古墳 銀製鍍金大型空丸玉(奈良県)
位置:奈良県生駒郡斑鳩町
法隆寺の西に位置する径50mの円墳です。6世紀後半に築造されました。大型横穴式石室を埋葬施設とし、石室内には未盗掘の家形石棺が収められていました。二体の被葬者の装身具は、10,000点を超えるガラス玉と金属製玉から構成されており、ヒスイ製勾玉や碧玉製管玉などの伝統的な石製玉類が含まれない点が大きな特徴です。金属製玉には(うつろ)勾玉、半球形空玉、梔子(くちなし)玉、空丸玉、有段空玉があり、バリエーションも豊富です。