玉類の形について
用語 | 説明 |
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勾玉(まがたま) | 鉤(かぎ)状に曲がっており、頭部にヒモを通すための孔がある。ヒスイや碧玉、メノウなど様々な石材やガラスで作られる。 |
管玉(くだたま) | 円筒形の玉で、タテ方向に孔が貫通しているのが特徴。勾玉と共に主要な玉である。 |
丸玉(まるだま) | 球のような形の玉で、中央に孔があけられている |
小玉(こだま) | 小さな玉で、現代のビーズに似ている。主にガラスで作られている。 |
臼玉(うすだま) | 小さな玉で、滑石で作られている。 |
算盤玉(そろばんだま) | ソロバンの珠に似た形をしている。碧玉、メノウ、水晶、埋れ木で作られる。 |
切子玉(きりこだま) | 角錐体を2個つなげたような形で、断面が六角形のものが多い。主に水晶で作られ、タテ方向に孔があけられる。 |
棗玉(なつめだま) | ナツメの実に似た形の玉で、側面は丸みを帯びている。タテ方向に孔がある。碧玉、埋れ木、コハクで作られる。 |
垂玉(たれだま) | 不定形なかたちをしており、上端に孔がある。水晶のほか、骨や牙で作られた玉も含む。 |
平玉(ひらだま) | 平らな玉で、表裏面と側面は面取りされている。側面に孔があけられているのが特徴。 |
玉類の素材について
用語 | 説明 |
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ヒスイ(翡翠:jadeite) | 緑色〜緑白色で硬度は6.5〜7。ヒスイ輝石を主成分とする岩石で、比重が3.3〜3.5で見た目よりも重い。日本では複数の産地があるが、新潟県糸魚川市の産地が有名である。 |
緑色凝灰岩(Tuff) | 淡緑色で硬度は幅があるが、軟質である。火山灰などが水中で堆積して形成された多孔質の岩石で日本海沿岸に広く分布する。比較的軟らかく加工しやすい。 |
碧玉(Jasper) | 濃緑色で硬度は7。結晶性の石英の一種で、多量の酸化鉄を含んだもの。弥生時代〜古墳時代の玉の素材として多用される。 |
メノウ(瑪瑙:Agate) | 赤橙色〜白色で、硬度は7。結晶性の石英の一種で、石体に縞模様をもち半透明である。古墳時代の勾玉などに多用される。 |
水晶(Rock crystal) | 無色で透明度が高く、硬度は7。石英の中で無色で透明度の高いものをいう。古墳時代の勾玉、切子玉などに多用される。 |
鉄石英 | 酸化鉄を多量に含む石英で、新潟県佐渡島で産出する。主に弥生時代の管玉に使用された。 |
アマゾナイト(天河石) | 長石グループの鉱物で、微量の鉛を含有することによって青緑色系に発色する。弥生時代に朝鮮半島からもたらされる。外観はヒスイと似ている。 |
滑石(Talc) | 灰色〜白色で、硬度は1。主にマグネシウムと珪素からなる。考古学で使用する「滑石」は通称であり、鉱物学的には滑石、蛇紋岩、蝋石、泥岩、頁岩、緑泥片岩などに分かれる。 |
結晶片岩(Schist) | 銀灰色、赤紫色、緑灰色などで、硬度は幅があるが軟質である。片状組織をもつ変成岩で玉作の際に、砥石などの工具として利用される。 |
コハク(琥珀:Amber) | 黄色〜赤褐色で、硬度は2〜2.5。主に針葉樹の樹液が化石となったもので、内部に昆虫の化石が混入したものも知られる。古墳時代の勾玉、棗玉などに利用される。 |
埋れ木(Bog wood) | 黒褐色で軟質。土中に埋もれた樹木が長年圧力を受けて変成し炭化したもの。古墳時代の算盤玉などに使用される。 |
ガラス(Glass) | 主原料の硅砂(SiO2)に、ソーダ灰、木炭、鉛丹などを加えて、青、緑、赤、黄色など様々な色調のガラス玉を生産している。古墳時代のガラスは、全て大陸からもたらされたものであるが、日本国内で再加工をする事例もある。 |
トンボ玉 | 本体のガラスとは違う色のガラスを斑点状に付けたもの。トンボの目に似ていることから称される。 |
雁木玉 | 色違いのガラスを用いて、表面に縞模様が付けられたもの |
金・銀層ガラス玉 | 二層のガラスの中間に金箔・銀箔を巻きつけたもの。 |
金 | 純金では軟らかすぎて、変形してしまうので金75%、銀25%前後の合金として使用することが多い、少量が朝鮮半島からもたらされている。 |
銀 | 空玉、梔子玉などに使用される。 |
銅 | 錫や亜鉛などを混ぜて、硬度を増して使用する。空玉などに使用され、表面を鍍金される例も多い。型打ち出しで作られるものと鋳造で作られるものがある。 |
空玉 | 金、銀、銅などを使用して、中空の丸玉、梔子玉とする。半円形の金属を銀蝋などで溶接して作ることが多い |
土玉(練玉) | 粘土製の玉。 |
山陰系玉類 | 松江市に所在する花仙山産のメノウ・碧玉などを用いて、出雲の玉作工人が製作した玉類。生産地は出雲のほか、工人・石材を移動して畿内地域で製作する場合も含まれる。 |
使用方法
用語 | 説明 |
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連 | 複数の玉をヒモでつないでいる「セット」の状態をいう。 |
首飾り | 頸の背部まで玉が廻るもの |
胸飾り | 首飾りのうち、背部には玉がなく胸元に玉が集中するもの |
手玉 | 手首に装着する |
足玉 | 足首に装着する。女性の着装であることが多い |
その他の用語について
用語 | 説明 |
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新羅 | 356〜935年。朝鮮半島南東部に版図をもち、676年に三国を統一。慶州を都とした。 |
加耶 | 3世紀〜6世紀中頃にかけて朝鮮半島中南部の洛東江流域に栄えた小国家群の総称。金海を中心とする金官加耶、高霊の大加耶などが盟主的存在である。 |
地下式横穴墓 | 地面に竪穴を掘り、その底部から更に横方向に穴を掘って地中に墓室をつくり、その中に遺体を葬る墳墓。宮崎県、鹿児島県などの南九州にみられる。 |
竪穴式石室 | 古墳時代前期〜中期にみられる墓室型式。木棺を安置した後に周囲に石壁を積み上げて、天井に蓋石を載せる型式である。 |
割竹形木棺 | 高野槇などの丸太を真っ二つに切断し、内部を刳り抜いて棺としたもの。古墳時代前〜中期に用いられた。 |
粘土槨 | 木棺の周囲に粘土を貼りつけて固定したもの。古墳時代前期〜中期に用いられた。 |
礫槨 | 木棺の底部や周囲を円礫などで覆ったもので、竪穴式石槨の簡略化したもの。 |
横穴式石室 | 遺体を葬る石室に通路を設けて、複数の遺体を追葬できるようにしたもの。古墳時代後期に盛行する。 |
玉類に近い遺物
用語 | 説明 |
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鍬形石 | 主に緑色凝灰岩や碧玉を素材として作られる腕輪型の石製品。ゴホウラ貝の腹面を利用して作られた貝輪をモデルとする。古墳時代前期の威信財として知られる。 |
車輪石 | 主に緑色凝灰岩や碧玉を素材として作られる腕輪型の石製品。ゴホウラ貝の背面を利用して作られた貝輪をモデルとする。古墳時代前期の威信財として知られる。 |
石釧 | 主に緑色凝灰岩や碧玉を素材として作られる腕輪型の石製品。イモガイ製貝輪をモデルとしている。古墳時代前期の威信財として知られる。 |
巴形石製品 | 主に緑色凝灰岩や碧玉を素材として作られる革楯の表飾として作られた金属製のものを模倣したもの。 |
紡錘車形石製品 | 主に緑色凝灰岩や碧玉を素材として作られる。石釧製作時の刳抜円盤を転用して作る場合もある。 |